ぶっこみりこちゃん

乙女ゲームのネタバレ感想

大正×対称アリス 感想

 

突然ですが、今自分がみている世界は現実なのか、それとも夢なのか。自分は本当に自分なのか。考えたことはないですか?

 

小学生の私ははやみねかおるに多大なる影響を受けて自分の好みや美しいと思うものがかなり定まったと思います。その中に「機巧館のかぞえ唄」という作品があります。

(古い作品なので内容失礼)仲間で怖い話会を開催し、次々と怪談を披露するのですが一人は至って普通のほのぼのした日常の話をします。それの一体どこが怖いの?と皆は思いますが、実はその日常は夢だったと。夢と現実、その違いがわからないことは最も怖いことだ。今この瞬間も本当に現実だと言えるのか?と問いかける内容でした。それはプロローグでそこから夢なのか現実なのか酷く曖昧な本編がスタートするのですが、私はこれに大きな衝撃を受けました。

当たり前だと信じていたいつもの日常に突然奥行きが感じられ、自分自身の存在も自分が正しいと思っていたものも全てグラグラ揺らぎ、恐怖と共に美しくも感じました。自分が見ていた世界は想像さえすればどこまでも広がるということに気づいたのです。

 

前置きが長くなりましたが、つまり、このような空想に時々耽っていた私にとって、対アリはとっても相性がよかったのです!私の百合花がFabulous!とウィンクしました。

 

どのファンタジー乙女ゲームもプレイヤーは突然世界に入り込むわけですが、丁寧に説明があります。ここはどんな世界なのか、このひとは誰なのか。序章でたっぷり語ってくれ、親切に用語集まであったりする。

対アリはまずなにもない暗闇から始まり、なんの説明もなく各世界に飛ばされ、なんとなく置かれている状況を把握して、なんとなくヒロインやまわりのキャラクターを掴んでいきます。ルートが変われば微妙に主人公の立ち位置も設定も変わるけどそれについても説明はない。

そして微妙に気持ち悪い箇所がずっとある。例えば、気づくと背景が反転していたり、猟師という言葉が本来の「猟師」として使われていなかったり、時系列や年齢が合わなかったり。おや?と思う違和感を説明してくれることはしばらくない。ファンタジー乙女ゲームにおける「当たり前の日常」が続くけど、ほんの少しのズレを感じて、どこか少しノイズが入り常に心の隅がザリザリするような感覚。その少し気持ち悪い感覚がすごく気持ちよかった。

 

そして聞いてください、なんと私は乙女ゲームの天才だったんです!

プレイ時とっても眠くて。楽しいのになぜか毎ルート、たとえ終盤でも寝てしまって。寝ている間対アリ世界の夢もみました。

 

真相に近づくまでは対アリの世界が夢の可能性だと考えてなかったわけで、どうしてこんなに眠ってしまうのか不思議でした。

ただでさえ不透明な対アリ世界の中、私自身も現実と夢の間にいて、世界はさらにまどろんでいました。果たしてこれは現実なのか、夢なのか、はたまたゲームの中なのか。頭の中に白いモヤが渦巻く中、物語を進めていったのです。ほどよい眠気はもちろん気持ちよく、ぼんやりとした頭の中であべこべな世界を楽しんだ私は乙女ゲームの天才でしょう。対アリの世界に身も心も没入し、はあ気持ちよかった。魔法にかけられているようでした。

 

この作品、好みはハッキリ別れるのかなと思う。感覚派の人間はすごく好きだと思うけど、リアリストや理系の人とか合うのかな!?(いやこの分類は正しくない、うまく言語化・分類できないだけでなんとなく伝わってください)

乙女ゲームとしても作品としても反則技を使っている気はするし、夢オチが嫌いな人はそもそも嫌だと思う。

でもこれは乙女ゲームの究極の理想ではある。マルチエンディングでは選ばれない男が存在する。少女漫画で当て馬を救いたかった私にとって、少女漫画では選ばれないような男と結ばれるのはとても幸せだけど、同時に選ばれない男も存在してしまう。彼にはヒロインがいないとダメなのに、選ばれない結末もある。その哀しみに目をそむけている。そんななか、全員にそれぞれヒロインがいる今作は究極の理想といえる。アリステア以外の男は前座に見えて全くそうではない。それぞれ彼らの物語は独立していて個として存在したまま尊重されていて誰にも侵すことができない。

でも、全ては有栖百合花とアリステアのストーリー。愛した彼らはアリステアのひとつの側面であり、また彼らを愛した彼女も有栖のひとつの側面である。だから、乙女ゲームではなくどこまでいっても二人のラブストーリー。究極の理想の乙女ゲームであり、乙女ゲームでない。その矛盾がこれまた気持ちいいですね!

 

そういう意味で最萌えというのも難しい。結局百合花が好きだという結論になる。このライターさんは男のために頭おかしいことが出来る女を描くのがうまい。

百合花、強い女だが目的のために手段を選ばない女ですき。しかも目的が、恋した男ただひとりなところが最高。

私は勝手に百合花を冬浦めぐみ系の女と思い、シナリオも重暗いだろうと決めつけていたのでせめてアイコンだけでもポジティブヨシャヨシャ!にしようと思ったのですが、本当にこういう女で好きでした。f:id:actizsm:20220625093739j:image

最初は癖つよ!きつ!と思っていたのにこんなに百合花を好きになるなんてね。まあ百合花のカウンセリング説教長くて説明的でダルい部分もありましたが、自分のことが好きで肯定してあげるところがすき!

夢なのか現実なのか、自分は誰なのか、とグラグラ揺れる世界の中で、百合花はいつも自分と彼を信じ、自分と彼を肯定し、自分と彼を愛し続けた。彼女は強い人だけど、その彼女をつくったのが「全部、君が君である証だ」というアリステアの言葉だったのが本当にいい!Excellent!

この言葉って本当に素敵で、彼女が他人に対して寛容なのも、自分を愛せるのも全てここからきている。だって他人の欠点だって「全部、君が君である証」なのだから。変な女だと言われても「個性があるっていいことじゃないですか。私が私でしかないという感じです」となるし、嫌な性格だと言われても「私は私だから、迷惑だったら諦めて受け入れてくれると助かります」となるわけだ。

そして、この曖昧で信じられない世界の中で、この言葉はいつだって強い光を放っている。百合花のお守りで、どんな世界でも百合花は百合花でいられたんだとおもう。一人ぼっちで弱いあの日の百合花をすくってくれた言葉で、現在のアリステアが救われるの良すぎか!?は〜気持ちいい!

 

うーん、なんだか物語的な感想しかないな!男はまさかのかぐやが一番かわいいです!

攻略をみてハッピーエンドを目指していたのになぜかバッドエンドに直行し、これが正規エンドだと勘違いして、大興奮してしまいました。メリバ厨ではありませんが、だってかぐやにハッピーエンドは似合わないですよね!?私はあなたには月にかえってほしいのですよ。地上を穢れた場所だと逃げていてほしいんです。

ああでも真相までたどり着くとかぐやちゃんも素直に幸せになって欲しいんだけどね。髪の毛1本すら落とさず自分の形跡を残さないようにして、朝4時からおうちの仕事をして、息を潜めてるかぐやちゃん。かわいいかわいいかぐやちゃん。

 

逆にキャラ萌えはなかったけど結末萌えしたのは魔法使いです。でもこれも魔法使いに萌えたというよりかは、結局百合花に萌えたのかも。アリステアのためになんでもする現実百合花と、魔法使いの片思いに死ぬまで付き合う夢の中のヒロイン一号百合花。どちらも片思いこじらせて頭おかしくなったヒロインで最高です。はあ、恋愛できないエンド、ヒロインに影響されない男、私のものにならない男、片思いヒロイン全部全部サイコー!気持ちいい!!

 

最後に。みんなアリステアを送り出し、現実世界の百合花と結ばれますが。本当にそのアリステアと百合花は「現実」なんでしょうか?それもまた夢だったら?

こうして記事を書いている「私」は本当に「私」なんでしょうか。実は私も有栖百合花の駒のひとつで、アリステアの人格の一人の可能性だってあるわけです。私のいる現実が本当に現実かなんて証明は出来ないのだから。私が信じているこの世界の常識だって、もしかしたら、他の立場からみるとあべこべなのかもしれない。現実ではなく全てが誰かの空想だったら・・・?地に足をつけて立っていたはずなのに、信じていた足元が揺らぐ、見え方が変わるだけで不安定な世界だ。この感覚が本当に気持ちいい。は〜〜〜ほんとに身体中で楽しんだとってもいい気持ちになれる作品でした!ありがとう!